亡くなった方の所有不動産、すべて把握していますか?~わからない時に手がかりとなるもの~
不動産の相続登記手続きは所有不動産の漏れがないように把握することが大事
亡くなった方が不動産を所有していた場合、相続手続きとして相続人等へ名義変更の登記手続きを行います。
その場合、誰が相続人であるか戸籍を調査し、相続人を確定させていくことが重要ですが、亡くなった方が所有していた不動産を具体的に把握することも登記をする上で重要です。
そんなこと当たり前だと思われるかもしれませんが、私共が実務を行っていると、何かのきっかけで後から相続登記漏れが発覚して、お困りのお客様からご相談いただくことがあったりします。
例えば、相続した実家を売却しようとして不動産屋さんに相談に行ったら、「ここの土地もお父様の名義なので、ここも名義を変えないと売却できない」と言われてしまったなどの場合です。
なぜこんなことが起こるかというと、例えば戸建ての場合で、公道(国が所有している土地を道路として利用している場合を公道と呼びます)に接していない土地の上に建物が建てられているとします。
こういった建物の場合、公道に出るためには私有地を通らないといけないため、通常その私有地に通路を設け、道路(公道に対して私道と呼びます)として利用します。
自分の自宅からその私道を通って公道に出る形になりますので、その私道を利用しなければ公道に出られない住宅が他にもある場合は、その住宅の所有者の方々がその私道を共有して所有していることが多いです。
この私道の登記漏れが前述の例で述べた不動産売却の時に発覚することがありますが、登記することを見落としてしまった理由として、毎年4月、5月に市区町村から送付されてくる固定資産税の納税通知書・課税明細書(以下、課税明細書と記載します)にその私道が記載されていないことが理由の1つとして挙げられます。
私道部分は一般的に「公衆用道路」として固定資産税が非課税となることがほとんどのため、その土地を管轄する市区町村によっては課税明細書に記載されていない場合があります。
そうなると、相続人がこの課税明細書を見て、亡くなった方の所有不動産がこれだけだと勘違いしてしまうと、所有していた私道(持分)を見落として登記をし忘れてしまうなんてことになります。
課税明細書を確認できれば、その方の所有不動産を把握する上で1つの手がかりになるため、重要な書類であることはたしかです。
しかし、課税明細書に記載の不動産のみが所有不動産だと思い込んで、それだけを頼りにしようとすると予期せぬ見落としをまねき、相続登記の漏れを引き起こしてしまうことにつながる可能性があります。
権利証が残っている場合は、確認してみる
さて、課税明細書のみでは不安な場合、亡くなった方の所有不動産の権利証が保管されていて残っている場合は、まずはその権利証を確認してみましょう。
権利証には所有している不動産の記載がありますので、それを手がかりにすることができます。
ただ、保管されていた権利証が全ての権利証であるかがわからないのであれば、確認のしようがありませんので100%漏れがないとは言い切れません。
しかしながら、私道のような部分は土地と建物を購入した際にセットとなって所有権を取得していることが多いかと思いますので、私道だけ登記漏れをしてしまうというような可能性はぐっと減るのではないでしょうか。
名寄帳を利用してみる
前述の権利証がなかった場合でも、亡くなった方の所有不動産を把握するためによく行われていることが名寄帳の写しの取得(閲覧)です。
名寄帳とは市区町村が所有者ごとに作成している固定資産課税台帳のことで、つまりは所有者ごとにどの不動産を所有しているかをまとめた不動産一覧のようなものです。
市区町村は固定資産税を課税するために誰がどの不動産を所有しているかを把握する必要があるため、このような台帳を作成しています。
また、前述の課税明細書には道路などの固定資産税が非課税の不動産については記載されないことがあると述べましたが、名寄帳はこの非課税不動産についても記載されていることが多いので別途取得(閲覧)するメリットがあります(※不動産を管轄する市区町村役場によっては記載されないこともあるようです)。
なお、名寄帳は不動産の所在地を管轄する市区町村役場や都(市)税事務所等(以下、市区町村役場等と記載します)で取得(閲覧)することができます。
通常、名寄帳の写しの請求は所有者本人とその代理人等が請求できますが、所有者が亡くなっている場合は相続人も請求することが可能です。
ただし、相続人が取得(閲覧)する場合は、亡くなった方の死亡記載の戸籍(除籍)と相続人であることがわかる戸籍を求められることが一般的ですので、持参する必要があります。
名寄帳の注意点としては、あくまで請求する市区町村役場等が管轄する不動産のみの一覧となりますので、全国にいくつも不動産を所有している場合は、管轄する市区町村役場等ごとに請求しなければいけません。
まとめ
亡くなった方の所有不動産を把握することは重要である一方、ここに聞けば一括して調べられるという方法は残念ながらありません。
そのため、亡くなった方の所有不動産を調べる場合は、前述したような確認手段で地道に把握していくことになりますが、普段聞き馴染みのない書面が多いかと思いますのでご心配な方は専門家に一度ご相談されることをおすすめします。
相続登記についてはこちらもご覧ください→相続が発生した際の不動産名義変更はどのような手続き?~おおよその流れ~