残された遺産は相続人でどうやって分ける?~不動産の共有には注意が必要!?~
まずは遺言書の有無を確認
相続が発生し、相続人で遺産をどのように分けるかを考える場面になった場合、まずは遺言書の有無を確認することが重要です。
なぜならその遺言書が有効な遺言であった場合、まずはその内容が優先され、その意向にそって遺産を分けていくことになるからです。
ちなみに遺言書が自筆証書遺言だった場合は、勝手に開封してはいけません。
まずは家庭裁判所での検認(遺言書の改ざんなどが行われないよう、遺言書の状態や内容を確認し、現状を保存すること)という手続きを受ける必要があります。
ただし、遺言が自筆証書遺言だった場合でも法務局での保管制度を利用していた場合は検認は不要です。
自筆証書遺言の保管制度についてはこちら→民法改正により保管制度施行されました!~自筆証書遺言書保管制度の豆知識~
※保管制度の詳細な手続き内容に関しては法務省のページにて確認できます→法務省「法務局における自筆証書遺言書保管制度について」
遺産分割協議でどのように分ける?
遺言書が残されていない場合は、相続人全員での話し合いにより遺産をどのように分けるかを決めていきます。
どのように分けるかは相続人間で自由に決めることができますので、必ずしも平等に分ける必要はなく、例えば相続人のうち誰か一人が相続するといった内容にすることも可能です。
また、相続人間での話し合いがまとまらない場合などは、法定相続分(※各相続人が被相続人の遺産をどんな割合で分けるか、法律上決められた割合のこと)通りに分けることもできます。
法定相続分についてはこちらもご覧ください→この場合は誰が相続人になる?具体的事例を考えてみよう~登記の基本その⑥~
不動産の共有には注意が必要!?
ここまで、どのように遺産を分けるかというお話を進めてきましたが、遺産のうち不動産については共有で相続するような分け方を考えている場合は少し注意が必要です。
例えば、相続人Aさんと相続人Bさんが亡父親名義の家を半分ずつ相続するという内容で相続登記を入れようと考えていた場合、その不動産はAさんとBさんで共有することになります。
このように不動産を共有している状態の場合、単独で行えることと、共有者全員で行う必要があることは法律のルールによって決められています。
単独でできることの一例としては、AさんもBさんも相手の同意なく、家のすべてを自由に使用することができます。
一方で、家を売却したい場合は、AさんもBさんも単独では売却することはできず、AさんBさんの共有者全員が協力して行う必要があります。
そのため、AさんとBさんが相続後に家を売却したい等、自己の意思だけでは進められないことを行いたい場合は、共有者との考えが一致していないと後々困ることになってしまいます。
以上のように、不動産のような物理的に分割できない遺産を共有で相続する場合は、後々どうしていきたいかについても含めて慎重に決めた方が良いでしょう。
共有以外の分け方もある
上記のように不動産を共有で相続するような分け方以外にも、換価分割と代償分割という分け方があります。
まず換価分割とは不動産を売却し、現金に換えてからその現金を相続人で分けるという方法です。
現金化してしまえば、不動産と違い、共有状態ということはありえませんので、後々処分方法でもめる心配はありません。
次に代償分割ですが、これは相続人のうち不動産を相続する相続人がその人以外の権利を有する相続人に不動産を相続しない代わりに現金(代償金)を支払う方法です。
例えば、相続人CさんDさんが、2分の1ずつ相続する権利を有していた場合、不動産を共有したくないので、Cさんが単独で不動産を相続することで合意しました。
その不動産の評価額は2000万円です。
この場合、本来Cさんは2分の1の割合で相続する権利しか有していませんので、不動産を多く相続してしまった分については現金1000万円を代わりにDさんに支払う形で穴埋めをします。
この方法は不動産を売却したくない場合等に活用できますが、代償金の準備をしておく必要があります。
なお、換価分割、代償分割で分けることを選択した場合は、その内容を遺産分割協議書に記載することが通常です。
まとめ
遺産をどのように分けるかは、遺言書がない場合は相続人間の話し合いで決められることになります。
相続人同士が近しい間柄であり、仲も良好な場合は特に問題は起こらないかもしれません。
しかし相続関係が複雑であったり疎遠であったり等、もめ事が発生しそうな場合はあらかじめ遺言書を作成し、対策しておくことも検討すると良いかと思います。