不動産の登記って必ずしないといけないの?~登記の基本その⑤~
不動産登記は必須?
以前コラムで、登記事項証明書(登記簿謄本)についてお話した際に、登記事項証明書に何が記載されているのかについてお話しました。
記載されている主な内容は、表題部には不動産の所在地、地目、建物の構造等、どのような不動産であるか、権利部(甲区)には所有権に関する権利関係、権利部(乙区)には所有権以外の権利に関する権利関係です。
また、登記事項証明書(登記簿謄本)が取得できる不動産であれば何かしらの登記が行われている不動産であるということがわかります。
それではこの不動産登記は必ずしなければいけないのでしょうか。
結論から申し上げると、表題部については必須ですが、権利部については任意です。
まず、表題部についてですが、新たに土地が生じた場合又は建物を新築した場合は、その所有者は1ヵ月以内(区分建物を除く)に登記しなければいけないという法律上の決まりがあります。
また、このルールを破ってしまった場合は、10万円以下の過料に処せられます。
対して権利部については登記は任意のため、登記を行うかは当事者の自由です。
こちらもご覧ください→不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)って何?~登記の基本その①~
登記は任意でもリスクはある
さて、上述のとおり、権利部については登記は任意のため、放置していても罰則があるわけではありません。
つまり登記を強制されることはないわけです。
ただし、権利部に登記をしておかないとリスクがあるため、登記すべきことが発生した場合はなるべく早く登記することをおすすめします。
それでは登記をしないとどんなリスクがあるのでしょうか。
一例として不動産の二重売買を例に登記の重要性を簡単にお話します。
例えば、A子さんがB太さんに土地と建物を売りました。
その後、B太さんが自己名義に登記を受ける前に、A子さんはC介さんとも不動産売買契約を結び、登記をC介さん名義にしてしまいました。
この場合、どちらが真の所有者であるかを主張することができるかというと、C介さんになります。
なぜこのようなことが起きるのでしょうか。
売買というものは通常、売買契約当事者双方の売買の意思表示のみによってA子さんからB太さんへ所有権が移るのが民法上のルールです。
そのため、売買契約の当事者同士の間ではB太さんはA子さんに対して土地と建物の所有権が自分にあることを登記せずに主張することができます。
一方、売買契約者以外の第三者、例でいうとC介さんもこの第三者にあたりますが、この第三者に対しては登記をしていないとB太さんは所有権を主張することができません。
自分が所有者であると主張することを法律用語で対抗するといいますが、第三者に自分が所有者であることを対抗するには登記が必要になるのです。
つまり、不動産を購入しても、登記を済ませておかなければ、不動産が自分のものであると主張できないため、自分の知らない間に別の第三者が不動産を取得してしまうリスクがあるのです。
例の話に戻りますと、B太さんはC介さんよりも早く売買契約を交わしていましたが、先に登記をしたのはC介さんですので、この第三者同士の間ではB太さんはC介さんに対して所有権を対抗することができません。
一方、C介さんはB太さんに所有権を対抗することができます。
先に契約を交わしているのはB太さんなので、優先して欲しいと考えるかもしれませんが、登記を先にした方が権利を主張できるのが法律のルールなのです。